認証と認可の違いとは?ITセキュリティ基盤を強化するための統合管理アプローチ

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企業のIT環境がクラウドとオンプレミスのハイブリッド構成へと移行する中、情報システム部門にとってセキュリティの確保と業務効率の両立は喫緊の課題となっています。その対策の根幹をなすのが「認証(Authentication)」と「認可(Authorization)」です。

両者はしばしば混同されがちですが、機能と役割は明確に異なります。この違いを正確に理解せずにセキュリティ対策を講じても、アクセス制御の不備による情報漏洩リスクを完全に排除することは困難です。

本記事では、認証と認可の定義と役割の違いを解説し、複雑化するIT環境においてこれらを統合的に管理し、堅牢なセキュリティ基盤を構築するための要点を提示します。

 

「本人確認」と「権限管理」の明確な分離

セキュリティ設計において、認証と認可は密接に関連していますが、プロセスとしては独立しています。両者の違いを端的に定義すると以下のようになります。

 

  • ・認証(Authentication / AuthN):
     アクセスしようとしている人物が誰であるかを検証する 「本人確認」 のプロセス。
  • ・認可(Authorization / AuthZ):
     認証されたユーザーに対し、特定のリソースへのアクセスや操作を許可する 「権限管理」 のプロセス。

 

情報漏洩などのセキュリティインシデントの多くは、正規のユーザーとして「認証」された後に、本来アクセスすべきでない重要データへの「認可」が適切に制御されていないことに起因します。

 

実社会のモデルで理解する両者の関係性

認証と認可の境界線は、物理的なセキュリティの例に置き換えることで、より実務的な理解が進みます。

 

シチュエーション

認証(本人確認)

認可(権限管理)

オフィスビル

受付で社員証を提示し、入館ゲートを通過する。

所属部署や役職に応じて、特定の執務室やサーバールームへの入室が可能となる。

ファイルサーバー

ID・パスワードを入力し、システムにログインする。

ログイン後、自身の業務に関連するフォルダのみ「閲覧・編集」が可能となる。

 

このように、システムへの入り口を通過させる処理が「認証」、その後の行動範囲を決定する処理が「認可」となります。

 

認証(Authentication):アクセスの正当性を検証する

「なりすまし」による不正アクセスを防ぐ認証プロセスは、セキュリティの第一関門です。近年では、単一の要素に依存するのではなく、複数の要素を組み合わせることで認証強度を高める手法が標準化しています。

認証における3つの要素

本人確認に用いられる情報は、大きく以下の3要素に分類されます。

 

  1. ・知識情報(Something You Know)
     パスワード、PINコード、秘密の質問など、本人の記憶に基づく情報。
     ※管理コストは低いものの、漏洩や総当たり攻撃のリスクが高い要素です。
  2. ・所持情報(Something You Have)
     ICカード、スマートフォン(SMS/認証アプリ)、ハードウェアトークンなど、物理的に所有している物。
     ※物理的な盗難がない限り、リモートからの攻撃耐性が高い要素です。
  3. ・生体情報(Something You Are)
     指紋、顔、静脈、虹彩など、本人の身体的特徴。
     ※偽造が困難で、紛失のリスクがないため、パスワードレス認証の中核技術として普及しています。
  4.  

多要素認証(MFA)の必須化

セキュリティレベルを向上させるためには、上記の3要素から異なる2種類以上を組み合わせる「多要素認証(MFA: Multi-Factor Authentication)」の実装が推奨されます。

 

「知識情報(パスワード)」に加え、「所持情報(スマートフォンへの通知)」を要求することで、仮にパスワードが流出したとしても、攻撃者による不正ログインを阻止することが可能になります。これは、ゼロトラストセキュリティモデルにおける認証の基本要件ともなっています。

 

認可(Authorization):最小権限の原則に基づく制御

認証を通過したユーザーに対し、適切なアクセス権を付与するのが「認可」です。ここでは**「最小権限の原則(Principle of Least Privilege)」**、すなわち業務遂行に必要な最小限の権限のみを付与するという考え方が重要です。

認可不備によるリスク

認可設定が不十分な場合、一般従業員による機密情報の閲覧や、意図しないデータの持ち出しといった内部不正リスクが高まります。役職や業務内容に応じた厳格なコントロールが不可欠です。

 

代表的なアクセス制御方式

  • ・RBAC(Role-Based Access Control):
    「部長」「経理担当」といった役割(ロール)に基づいて権限を割り当てる方式。人事異動に伴う管理工数を抑制できるため、多くの企業で採用されています。
  • ・ABAC(Attribute-Based Access Control):
    ユーザーの属性だけでなく、アクセス場所、時間帯、デバイスの状態といった環境属性(コンテキスト)を動的に評価して権限を決定する方式。より柔軟で高度な制御が可能です。

 

ID管理の課題:サイロ化による運用負荷とリスク

SaaS(Software as a Service)の利用拡大に伴い、企業における認証・認可の管理は複雑化の一途を辿っています。システムごとにID管理が分散(サイロ化)することで、以下のような課題が顕在化しています。

 

  • ・運用管理の肥大化:
    入退社や人事異動のたびに、複数の管理画面でIDの登録・変更・削除を行う必要があり、情報システム部門の工数を圧迫しています。
  • ・セキュリティリスクの増大:
    退職者のIDが適切に削除されず、長期間放置される「削除漏れ」が発生しやすくなります。これらはサイバー攻撃の標的となりやすく、重大なリスク要因です。
  • ・ユーザー利便性の低下:
    システムごとに異なるパスワードを管理する必要があるため、パスワードの使い回しやメモ書きによる管理など、シャドーITを誘発する原因となります。

 

認証と認可を統合し、IT基盤を適正化する3つの施策

分散したID管理を集約し、セキュアかつ効率的な環境を構築するためには、以下の3つのアプローチによる統合管理基盤の導入が有効です。

 

1. シングルサインオン(SSO)による認証基盤の統一

SSOを導入し、認証プロセスを一元化します。ユーザーは一度の認証で許可されたすべてのクラウドサービス・社内システムへアクセスが可能となります。これにより、パスワード管理の負担軽減と、認証ポリシーの統一的な適用が実現します。

 

2. ライフサイクル管理の自動化

人事システムをマスターデータとし、各システムへのIDプロビジョニング(作成・更新・削除)を自動化します。入社時の即時ID発行や、退職時の即時権限剥奪が可能となり、手作業によるミスや削除漏れリスクを根本から排除します。

 

3. コンテキストベースの適応型アクセス制御

「誰が」アクセスするかだけでなく、「どのような状況で」アクセスしているかをリアルタイムに評価します。「社内ネットワークからはパスワードレス」「社外や未登録デバイスからはMFAを強制」といった動的な制御を行うことで、セキュリティ強度と利便性の最適化を図ります。

 

まとめ:統合ID管理がもたらす経営的メリット

認証と認可は、ITセキュリティの要であると同時に、従業員の生産性を左右する重要な要素です。これらを個別のシステムで管理するのではなく、統合ID管理基盤(IDaaSなど)を用いて一元化することは、セキュリティリスクの低減のみならず、運用コストの削減と業務効率の向上に直結します。

確実な本人確認(認証)と、適切な権限管理(認可)の仕組みを再構築することは、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支える強固な基盤となります。

 


 

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