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IGAとは?IDガバナンス管理の必要性やメリットをわかりやすく解説

作成者: セシオスブログ編集部|Aug 26, 2026, 10:04:54 AM

 

クラウドサービス(SaaS)の導入が進む中、社内のID管理やアクセス権限の統制は複雑になっています。特にIPO(新規上場)を目指す企業や、内部統制を厳格化したい組織にとって、「誰が、どのシステムに、どのような権限を持ってアクセスしているか」を正確に把握し、継続的に監査・コントロールする仕組みが欠かせません。


こうした課題を解決するアプローチが「IGA(Identity Governance and Administration:IDガバナンス管理)」です。本記事では、IGAの基本概念から必要とされる背景、メリットや導入方法までを詳しく解説します。

 

 目次

 

IGA(IDガバナンス管理)とは?
 IAMとIGAの違い
なぜ今、IGAが必要なのか?注目される3つの背景
 背景1:外部からの不正アクセスや、内部不正などセキュリティリスクの増大
 背景2:コンプライアンス・監査要件の厳格化
 背景3:クラウドサービスの普及によるID管理の複雑化
IGA導入で得られる3つのメリット
 メリット1:セキュリティ強化と情報漏洩リスクの軽減
 メリット2:コンプライアンス遵守と監査対応の効率化
 メリット3:システム管理者の業務負担軽減と生産性向上
IGAを導入するには?
 ① IGA専用ソリューションの活用
  IGA専用ソリューションの主な機能
 ② IDaaSの活用
  IDaaSの主な機能
失敗しないIGA導入のポイント
 ① 導入目的を明確にし、スモールスタートを心がける
 ② 自社の運用に合ったソリューションを選定する
まとめ:適切なIDガバナンス管理で、安全で効率的なIT環境を実現

 

 

IGA (Identity Governance and Administration) とは、社内の様々なシステムに対して「誰が、どのシステムに、どのような権限を持っているか」を厳密に管理し、セキュリティポリシー(組織のルール)に基づいて適切に統制・監視・最適化することです。「IDガバナンス管理」や「アイデンティティ・ガバナンス管理」と呼ばれることもあります。


私たちが業務を行う際、勤怠管理や顧客管理、チャットツールなど、部署や役職に応じてさまざまなクラウドサービスや社内システムを利用しています。企業では従業員の入退職や異動といった人事イベントで各サービスのアカウント発行や権限変更が行われます。企業統治や内部統制などのガバナンスの強化が強く求められる昨今において、これらサービスの利用拡大や働き方の多様化によって情報資産の管理が複雑化しています。


一方で、サイバー攻撃が高度化し、企業のセキュリティ環境は厳しさを増すなか、IT運用のガバナンス確立には「誰がどの情報へアクセスできるか」という社内ルールを守り、統制された管理体制を維持することが不可欠です。入社や異動時に付与した権限を半永久的に付与し続けるのではなく、一般ユーザーの権限で業務ができるのに管理者権限を付与していないか、異動して不要になったシステム権限を付与し続けていないかなどを継続的に監視し続ける体制が必要になります。


IGAを導入することで、人事データと連動させた権限付与及び剥奪だけでなく、定期的な権限の確認作業(棚卸し)も自動化して常に最適な権限が付与された状態を維持します。権限変更や承認などの各種履歴も記録されるため、監査にも対応できます。企業のガバナンス強化と情報システム部門の業務効率化を同時に叶える仕組みがIGAなのです。


企業でIGAを導入するためには、IGA専用のシステムを導入するか、既存の認証システム(IDaaSなど)にIGAの拡張機能を追加する必要があります。なお、自社の人事システムや利用しているクラウドサービスとどこまで自動連携できるかは、導入する製品によって異なるため確認が必要です。

 

◆ IAMとIGAの違い

IGAと類似した用語として「IAM」がありますが、それぞれ意味や役割が異なります。

 

IAM(Identity and Access Management):ID及びアクセス管理
IDの作成・削除、シングルサインオン(SSO)や多要素認証などを用いて「誰がどのシステムにアクセスするか」を制御する仕組みです。IAMはシステムの効率的な利用と日常的なセキュリティ向上を図ります。

 

IGA(Identity Governance and Administration):IDガバナンス管理
組織のガバナンスや法令、セキュリティポリシーに対して、アクセス権限が「本当に適切か」を監査し、管理・統制する仕組みです。 IGAはIDライフサイクル全体を通じた統制と可視化を図ります。


IGAはIAMを補完し、ガバナンスと監査の観点を追加する役割を担っています。

 

 

企業のIT環境が急速に変化する中で、従来のセキュリティ対策だけではガバナンスを整えることが難しくなってきています。ここでは、IGAが必要とされている3つの要因を解説します。

 

不正アクセスや情報漏洩の多くは、脆弱なID・パスワードの管理や、適切に処理されていないアカウントが原因で発生します。特に、退職者のアカウントが削除されずに残っていたり、異動前のシステム管理権限がそのまま維持されていたりする状況は、重大なセキュリティインシデントに直結します。クラウドサービスの利用が増加し、業務委託や派遣社員など雇用体系が多様化する現代において、IDのライフサイクル全体を可視化し、不正アクセスや内部不正を防ぐセキュリティ対策が不可欠となっています。

 

上場企業やIPO(新規上場)を控える企業、あるいは特定の業界基準を遵守する必要がある企業では、ITシステムにおけるアクセス管理の監査基準が極めて厳格化しています。監査人からは、権限が適切に承認されて付与されたかを示す証跡(ログ)や、定期的に権限の棚卸しが行われている証拠の提出を求められます。手動でこれらの監査証跡を作成するには膨大な工数がかかるため、監査対応を自動化・効率化できるIGAが求められています。

 

多くの企業が業務効率化のために複数のクラウドサービス(Microsoft 365、Google Workspace、Salesforceなど)やオンプレミスシステムを併用するようになりました。それらを個別に管理している場合、システムごとに管理画面やアカウント管理手法が分断されているため、情報システム部門は「誰が、どのサービスに、どのような権限でアクセスできる状態なのか」を把握することが困難になっています。管理の行き届かない「シャドーIT」の増加や、Excelなどを用いた手作業での管理の限界が、IGAの必要性を高めています。

 

 

IGAを導入することで、企業のセキュリティレベルを引き上げ、内部統制の強化や生産性の向上に寄与します。ここでは、代表的な3つのメリットを紹介します。

 

社内のアカウントとそれに付与されている権限がすべて「見える化」されるため、管理外のアカウントや不要な特権といったセキュリティの死角を減らすことができます。退職者のアカウントが確実に削除され、必要最低限の権限(最小特権の原則)のみが各ユーザーに付与されることで、サイバー攻撃や内部不正による情報漏洩のリスクを抑えられます。

手作業による台帳作成やアカウントの整合性確認を自動化することで、設定ミスや漏れを防ぎコンプライアンスの遵守を実現します。さらに、「申請・承認ルート」や「定期棚卸しの実行ログ」をいつでも証跡として提示できるため、監査対応をスムーズに行えます。

 

人事情報と連動したID管理の自動化(プロビジョニング)により、人事異動や組織改編期に発生する膨大なアカウント設定業務から解放されます。管理者の手作業によるミスがなくなり、ユーザー自身で必要な権限を申請して速やかに業務を開始できるため、情報システム部門と現場の双方において生産性が向上します。


 

 

IGAを自社に導入するには、大きく分けて、IGAに特化した専用ソリューションを用いる方法と、認証基盤であるIDaaS(Identity as a Service)を活用する方法の2つがあります。

一つの方法として、IGAの機能に特化した専用ソリューションを活用する方法があります。複雑な承認ワークフローの構築や、職務分掌(一人のユーザーに利益相反する強力な権限を同時に与えないようにする設定)、高度なリスク分析機能などを備えており、企業のガバナンスを徹底的にシステム化することができます。

 

IGA専用ソリューションの主な機能


IDライフサイクル管理
社員の入社、異動、休職、退職といった人事業務に伴うIDのライフサイクル処理を自動化する機能です。人事システムなどと連携し、入社日や退職日などの発令日に合わせて、各システムやクラウドサービスのアカウントを自動的に作成(プロビジョニング)、変更、削除(デプロビジョニング)します。これにより、手作業による作成漏れや、退職アカウントの削除漏れを防ぎます。

アクセス権限の可視化と棚卸し(レビュー)
社内のすべてのシステムとアカウント情報を一元的にダッシュボードなどで可視化します。これにより、不要な特権アカウントや使われていない休止アカウントを容易に特定できます。さらに、部署長などの承認者に対して「本当にこのメンバーにこの権限が必要か」を定期的に確認させ、不要な権限を自動で剥奪する棚卸し業務をシステム上で完結できます。

アクセス権の申請と承認ワークフロー
新しい業務システムを利用したい場合に、ユーザーがセルフサービスでアクセス権限の申請を行い、上長やシステム責任者が承認するワークフロー機能です。申請から承認、そして実際の権限付与までをシステム上で一貫して管理するため、「誰が、いつ、どのような理由で権限を申請し、誰が承認したのか」というプロセスが自動的に記録され、不正な権限付与を防止します。

職務分掌(SoD)の徹底
職務分掌(SoD:Segregation of Duties)とは、不正や誤謬を防ぐために、一人のユーザーに利益相反する強力な権限を同時に与えないように制御する考え方です。例えば、「経理システムの支払いデータを作成する権限」と「それを承認する権限」を同一のIDに付与できないようにルールを設定し、システム的にポリシー違反を検知・ブロックする機能を持ちます。

レポーティングと監査対応
現在のID状況やこれまでの権限申請・承認ログ、棚卸しの実施履歴などをレポートとして自動作成する機能です。監査人が求める「アカウントの正当性を証明する資料」を迅速に提出できるようになり、監査の直前に膨大なExcelシートを突合するような手作業から解放されます。過去の特定時点におけるIDおよび権限の状態を遡って確認できる機能を持つものもあります。

 

もう一つの方法として、ID管理や認証、アクセス制御機能を備えたクラウドサービス「IDaaS(Identity as a Service)」を活用する方法があります。まずはSSOや多要素認証で認証を固め、その次にID管理の自動化、最後にガバナンス(棚卸し・職務分掌など)というように、IDaaSを起点として段階的なセキュリティ強化を目指すことができます。

 

IDaaSの主な機能


ID管理(プロビジョニング)
データベースと連携し、ユーザーの入社・異動・退職といったライフサイクルイベントに合わせて、利用するサービスのアカウントを自動で作成・更新・削除する機能です。これにより、アカウントの作成漏れや削除漏れを防ぎ、セキュリティリスクを低減し、さらに管理者の手作業による負担を大幅に軽減します。


シングルサインオン(SSO)
一度の認証で、複数のクラウドサービスや社内システムにログインできるようになる機能です。ユーザーはサービスごとに異なるIDやパスワードを覚える必要がなくなり、利便性が向上します。また、管理者は複数のシステムにわたるパスワード管理の負担を軽減し、統制を強化できます。

多要素認証(MFA)
パスワードによる認証だけでなく、スマートフォンアプリで生成されるワンタイムパスワードや生体認証を行うなど、複数の認証要素を組み合わせることで本人確認を強化する機能です。万が一パスワードが漏洩しても、他の認証要素がなければログインできないため、なりすましによる不正アクセスを防ぎ、セキュリティレベルを向上させます。


アクセス制御
IDaaSと連携したサービスへアクセスできる時間や場所、端末(PC、スマートフォンなど)を制限制限する機能です。サービスにアクセスできるルールを決め、それ以外の方法によるアクセスを阻止することで、社外からの不正なアクセスを防ぎセキュリティを高めます。

 

 

◆ IDaaS利用時にIGAの機能を補う方法


IDaaSを起点としてIGAの導入を始める場合、IDaaS標準の認証・ID管理機能だけではIGA専用ツールに比べ不足する機能がある点に留意する必要があります。それらを補うには、 IDaaSに「IGA機能の追加オプション」がある場合はそれを利用したり、IGA機能に特化した外部ソリューションと連携するといった方法が挙げられます。

 

◇ セシオスが提供するIDaaS「SeciossLink」の機能はこちらをご覧ください

 

 

 

IGAは、企業のシステム全体や業務プロセスに関わるため、導入を成功させるための重要なポイントを2つ解説します。

最初から社内のすべてのサービスやシステムをIGAの管理対象にしようとすると、連携設定や業務プロセスの調整に膨大な時間がかかり、プロジェクトが頓挫する可能性があります。まずは「監査で特に指摘を受けやすい主要クラウドサービス(SaaS)」や「個人情報を扱う重要システム」などにスコープを絞り、段階的に適用範囲(接続するシステムや部門)を拡大していくスモールスタートが成功の鍵です。

自社のIT環境がオンプレミス中心なのか、あるいはSaaSを中心としたクラウド中心の環境なのかによって、最適なソリューションは異なります。また、導入後に日々の設定変更や定期棚卸しを行う情報システム部門の「運用のしやすさ」も重要な評価基準です。自社の現状の課題(アカウント棚卸しの自動化、自動プロビジョニングなど)に必要な機能が十分に備わっており、管理者とユーザーの双方が直感的に操作できる製品や、段階的な機能拡張が可能なソリューションを選定することが大切です。

 

 

IGA(IDガバナンス管理)は、単なるセキュリティ対策の一環にとどまらず、企業が安全かつ迅速にビジネスを展開するための重要なインフラです。クラウドの普及や働き方の多様化、コンプライアンスの強化といった時代の要請に対応するには、IGAの導入が不可欠です。自社の規模や課題に合わせた最適なIGAソリューションやIDaaSの活用を検討し、管理負担を最小限に抑えながら、安全で効率的なIT環境を構築しましょう。