IoTの価値を高める機械学習とは?

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IoTの急増

今まではパソコンやスマートフォンなどがインターネットにつながり、メール、SNS、TV電話などヒト同士(P2P、Person to Person)が情報交換を行ってきました。

しかし、今や世の中のあらゆるモノがインターネットにつながるIoTの時代に突入し、モノ同士が通信するM2M(Machine to Machine)も出現しています。

(画像はPixabayより)

IHS Markitは、2017年10月24日インターネットに接続されているIoTは、2017年で約270億個、2030年には1,250億個に急増する、と予測しています。

米国のIT調査会社IDCの調査(2017年6月14日「Worldwide Semiannual Internet of Things Spending Guide」)では、2017年世界のIoT関連支出総額は前年比16.7%増の8,000億ドル(約88兆円)超、2021年までに約1兆4,000億ドル(約154兆円)に達すると予測しています。

(出典:IDC Japan、「国内IoT市場テクノロジー別予測、2017年~2021年」、2017年4月10日)

日本国内のIoT市場は、IDC Japanによれば2016年の支出額は5兆270億円、2016年~2021年の年間平均成長率(CAGR)が17.0%で、2021年の支出額は11兆円に達する見込みとのことです。

今後は、単にモノによるデータ収集とその分析ではなく、ソフトウエアとサービスが連携した新たなデジタルビジネスの創出が考えられます。

そのため、IoT市場の支出額割合は、サービスが2016年~2021年の間CAGR64.8%で急成長してハードウエアを上回り、2021年にはソフトウェアとサービスで全体の62%に達すると見込んでいます。

IoTの利用分野

IoTには、情報収集のための各種センサー、インターネットとの通信機能、データ処理を行うアプリケーション、それらを制御するCPUなどのチップが搭載されています。

(出典:矢野経済研究所、「IoT型センサーシステム数を予測(2017年)」、2017年7月18日)

 

矢野経済研究所の調査結果によると、2016年度の国内IoT型センサーシステムの市場規模は、設置数量約110万システムでした。2020年度には、200万システムを突破する見込みだといいます。

利用分野別では、セキュリティ関連が46.0%、自動車関連が6.5%、エネルギー関連が16.1%と、3分野で98.6%を占めました。

今後成長が見込まれる分野として工場・製造関連、中長期的には、時間・状態基準による予防保全、故障予知ソリューションなどを挙げています。

経済産業省等の「2017年版ものづくり白書」によると、IoTを活用して企業が製造現場からデータ収集を行っている割合は66.6%に達していますが、見える化、プロセス改善、トレーサビリティ管理などの具体的なソリューション活用が進んでいないことが判明しました。

また、生産現場以外のデータやIoTなどの利活用では、バリューチェーン全体の新たな価値創出に取り組んでいますが、ビジネスモデル変革も伴う付加価値創出までには至っていない、とのことです。

その原因は、異なった様々なIoTからのビッグデータの取り扱いや処理方法が明確でないことです。

クラウドネットワークにより集積したビッグデータを解析し、企業やビジネスにとって有益な情報を得る方法には、統計的手法の他に人工知能(AI)系技術の応用があります。

機械学習は、有用な手法の1つです。

機械学習の種類と手法

機械学習には、主に3種類あります。

1.教師あり学習

教師あり学習では、既知の入力データと対応する出力データから、分類や回帰を用いて構築したモデルを訓練し、新しいデータに対してモデルが合理的に将来の出力データを予測できるようにします。

・分類
入力データを複数のカテゴリーに分類し、離散的な応答を予測します。用途は、医療用画像診断、音声認識、信用評価などです。
数学的なアルゴリズムとして、線形分類器・サポートベクターマシン(SVM)、ニューラルネットワーク(パーセプトロンなど)、決定木などが使われます。

・回帰
連続的な応答を予測します。用途は、温度変化、電力需要、株価、売上、手書き文字認識などです。
アルゴリズムは、統計学で用いられている線形回帰・非線形回帰、回帰木、サポートベクター回帰、ガウス過程回帰などです。

 

2.教師なし学習
教師なし学習では、性質が類似する入力データのみをグループ化してクラスターを形成し、入力データ内に潜むパターンや構造を発見することで、新たな入力データに対する出力データを予測します。用途は、遺伝子配列分析、マーケティング、物体認識などです。

アルゴリズムは、K平均クラスタリング、階層クラスタリング、主成分分析、自己組織化マップ、ニューラルネットワークなどです。

3.強化学習
強化学習は、上記の2つの学習方法とは異なり、与えられた環境下で、最大限の成果(報酬や利益)が得られるように試行錯誤を繰り返します。

強化学習の有名な例は、プロ棋士に完全勝利したGoogle社の囲碁プログラム「AlphaGo(アルファ碁)」です。

IoTでは、入力データが存在することから、現状では強化学習そのものは使われないかも知れません。

機械学習は、IoTのビッグデータを解析し価値ある情報を引き出す強力な手法であるため、モノづくり、医療関係、社会生活、ビジネスに大きな変革をもたらす期待があります。